■■ 乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について−日本小児科学会見解−

平成16年10月31日
厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人 日本小児科学会
会 長 衞藤 義勝

乳幼児(6歳未満)に対する
インフルエンザワクチン接種について

−日本小児科学会見解−

 わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える。
その根拠としたものは、主に平成12-14年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症事業)「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者 神谷 齊・加地正郎)」の報告である。
研究班の報告は、
1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
 とまとめられる。

・ 乳幼児は高齢者と同様インフルエンザに対してハイリスクであり、本人のみならずハイリスクを取り巻く周囲の人々、家族、同居者、保育園、学校では保育士、教職員など関係者への接種も合わせて実施することも感染の機会を減らす上で大切であると考えられる。
・ インフルエンザ脳症の発現率を減少させるかどうかについては、「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療および予防方法の確立に関する研究」(主任研究者:森島恒雄)の成績(中間報告)では脳症患者

とインフルエンザ罹患者の間でワクチン接種率に有意な差はなかったとしており、この段階ではインフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエンザワクチン の有効性は低いと考えられる。しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じ、そ の結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はあるものと考えられる。
・ 重篤な合併症の報告はなされておらず、あるとしても極めて稀な範囲であると考えられる。

なお、基礎疾患を有する乳幼児については従来と同様の考え方であり、インフルレンザ感染により重症化が容易に予測されるような場合においては、インフルエンザワクチン接種は健康乳幼児より強く勧められる。

                                   (日本小児科学会HPより)